「イシュマエル」という本をご存知だろうか。
友人がある日「読んでください」と置いていった本。
彼女は丁寧にも英語の原書と日本語の翻訳本の二冊を置いていってくれた。
なかなか本を読む時間が見つけられずにいた私は、しばらくこの二冊を机の上に置いたままにしておいた。
ある日、少し時間ができたので手に取って読み始めると…これがすごい本で。
うまく説明できないのだけれど、とにかく「すごい!」。何というボキャブラリーの少なさと嘆かわしい気持ちになるけれど、歯がゆいくらい、きちんとそのすごさを説明できない。
「イシュマエル」は「世界を救う真摯な望みを抱く」生徒を募集した教師。
そしてその募集に応じたのが、この本のもうひとりの登場人物の「僕」。
この二人が時間をかけて問答を重ね、今の世界がどうやって作られていったのか、そのからくりを解きほぐしていく。
「イシュマエル」は「僕」に問う。
「君たちの文化の人間で、どっちが世界を破壊したがっているのかね?」
この「どっち」という言葉の意味が、次第にはっきりとしてくるのがおもしろい。
「個人によって程度の差はあれ、君たちは、君たちに世界を破壊し続ける行為を無理強いする文明システムに拘束されている。そうしないと生きられない仕組みになっている」
なるほど、と私はただ唸る。
311を経験した今、もう一度読み返してみたいと思う本である。
みなさんも機会があったらぜひご一読を。
ただ、残念なことに、この本は今は絶版となっているため、図書館で捜すか(武蔵野市の図書館にはなかった)、古本を買うか、持っている人に借りるか、この3つの方法しかないのが難点だが。
「イシュマエル ヒトに、まだ希望はあるか」 ダニエル・クイン著